注目されていた超高配当のソーシャルレンディング「みんなのクレジット」行政処分の行方
こんにちは
金商業の登録業務を得意とする行政書士の小野です。
実は、現在進行形でソーシャルレンディングの登録案件を進めています。
なので今回のみんなのクレジットの業務停止命令は大変関心があります。が、
その反面、これから登録手続きを詰めていこうと頑張っている私にはある意味営業妨害です。
これでまた一段と金融庁・関東財務局の締め付けが強くなります。
それでは、今回みんなのクレジットにどのようなことが起きたのか?
詳しく見ていきましょう!
注目のみんなのクレジットについに業務停止命令が下りました!
最近、大きく注目を浴びているソーシャルレンディング。
その中でも「みんなのクレジット」は、高い配当を謳い、投資家から多くの注目を浴びている話題の会社でした。
そのみんなのクレジットに、2016年12月に証券取引等監視委員会が検査に入りました。
その結果、2017年3月24日に同委員会が金融庁に同社への行政処分を行うよう以下の内容の勧告を行ないました。
平成29年3月24日
証券取引等監視委員会
株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について
1.勧告の内容
証券取引等監視委員会が株式会社みんなのクレジット(東京都渋谷区、法人番号1010001168066、代表取締役 白石 伸生(しらいし のぶお)、資本金2億円、常勤役職員12名、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
2.事実関係
株式会社みんなのクレジット(以下「当社」という。)は、当社ウェブサイトを通じて、匿名組合(以下「ファンド」という。)の出資持分の取得勧誘を行い、その出資金により貸付事業を行っている。なお、平成28年11月末現在、償還期限が到来していないファンドは、56本、出資金約17億6000万円である。
今回検査において、当社の業務運営の状況を検証したところ、以下の問題が認められた。(1)金融商品取引契約の締結又は勧誘において重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
ア 貸付先について誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
当社は、平成28年4月から、法人向けローンを出資対象事業とする「不動産ローンファンド」や「中小企業支援ローンファンド」等と称するファンドの出資持分の取得勧誘を行っている。
当社の貸付先は、そのほとんどが当社の親会社である株式会社甲(以下「甲」という。)及びその関係会社(当社、甲及びその関係会社を合わせて以下「甲グループ」という。)となっており、貸付先が甲グループに集中している状況となっている。
当社は、貸付先の審査の段階から、甲グループへの貸付けを予定していたにもかかわらず、ウェブサイトにおいて、ファンドが複数の不動産事業会社等に対し貸付けを予定しているかのような表示をし、貸倒れリスクが分散されているかのような誤解を与える表示を行った上で、顧客に対し、出資持分の取得勧誘を行っていた。
また、甲は、ファンドから借り入れた資金の返済について、不動産事業等による収益から返済する旨をウェブサイトに記載しているが、実際には、下記(2)アのとおり、他の償還期限が到来していないファンドの資金を充当しているものも認められた。イ 担保について誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
当社は、取得勧誘を行ったファンドについて、契約締結前交付書面において、原則として貸付先から不動産若しくは有価証券の担保を受け入れ、返済が滞った場合には、担保権の実行により貸付金の回収を図る旨を表示している。
しかし、実際は、上記アのとおり、貸付先のほとんどが甲グループであり、設定された担保の大半が甲の発行する未公開株式となっており、中には担保が設定されていない貸付けも存在する状況となっている。
このように、当社は、甲グループの信用リスクが顕在化した場合には価値が大きく毀損する甲の発行する有価証券を担保としているほか、貸付けの中には担保設定していないものが存在しているにもかかわらず、ファンドの貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示を行った上で、顧客に対し、ファンドの出資持分の取得勧誘を行っている。当社の上記の行為は、金融商品取引法第38条第8号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、(略)重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。
(2)当社の業務運営について投資者保護上問題が認められる状況
当社は、ファンド出資金が下記アからオの状況にあることを認識しながら募集を継続している。
ア ファンドの償還資金に他のファンド出資金が充当されている状況
当社が取得勧誘を行ったファンドのうち、既に償還された17本のファンドの償還金の原資を検証したところ、10本について、他の償還期限が到来していないファンドの資金が償還金に充当されている状況が認められた。
イ 当社のキャンペーンにファンド出資金が充当されている状況
当社は、ファンドの募集を開始して以降、キャッシュバックキャンペーンと称して、顧客に現金を還元しているが、当該現金還元の原資を検証したところ、甲へ貸し付けたファンド出資金が当社に還流して充当されている状況が認められた。
ウ 白石代表がファンド出資金を自身の借入れ返済等に使用している状況
白石代表は、当社が甲に貸し付けたファンド出資金について、甲の社員に指示を出し、自身の預金口座及び自身の債権者に送金させている状況が認められた。
エ 甲グループの増資にファンド出資金が充当されている状況
甲グループの一部の会社は、甲グループの他の一部の会社を引受人とする増資を行っている。当該増資については、ファンド出資金が甲グループ内で貸付け、借入れが繰り返された後に充当されている状況が認められた。
オ ファンドからの借入れを返済することが困難な財務の状況
当社は、ファンド出資金の最大の貸付先である甲が、平成28年5月末から同年11月末の間、毎月多額の損失を出し続け、累積赤字を増加させており、同年8月末から同年10月末においては債務超過の状態にあったことを認識していた。甲は、同年11月末、上記エの増資により債務超過状態を解消しているが、一方で、同年5月以降、ファンドから毎月多額の資金を借り入れていたことから、同年11月末時点における短期借入金が流動資産を大きく上回る状況となっている。
また、平成28年11月末時点における甲グループ全体の財務状況についても、短期借入金の総額が流動資産を大きく上回っている状況となっていることから、ファンドからの甲グループへの貸付けは返済が滞る可能性が高い状況と認められる。上記の状況は、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
その結果3月30日にみんなのクレジットに「1ヶ月の業務停止命令」が下ったのです。
「ソーシャルレンディング」は、新しい業態で注目度が高く、その成長スピードはかなりのものがあります。
みんなのクレジットも最終45億ほど集めていた様で、そのスピードに合わせてコンプライアンス経営を実践するのは凄く大変な事です。
このような問題が起こると財務事務所での登録実務の対応も一層厳しくなります。
先ほども理財7課の担当者に、「ソーシャルレンディングには、行政処分もでてますから…」と釘をさされました。
当事務所でもこの問題を研究して、今後のクライアントのサポートに生かしたいと思います。
それでは「みんなのクレジット」にはどのような問題があったのでしょうか?
現役で金商業登録を代行している行政書士としてこの問題を見て行きたいとお思います。
とその前に、まずは今回のみんなのクレジットの業務停止命令に対してに社長であるS氏に
クラウドポートが独占インタビューした記事をご覧下さい。
代表のS氏の弁明が事細かに再現されています。
日ごろから我々行政書士は、経営者と役所の橋渡しをしています。
なので、どちらの本音・意見も分かります。
そして、このS氏のインタビューでは「経営者の本音」がまじまじと展開されています。
ただ、この「経営者の本音」と「法律の建前」は違います。
経済は、経営者1人のものではありません。投資家のものでもあり社会全体のものです。
行き過ぎた「経営者の本音」は、社会悪につながります。
行き過ぎた「法規制」もしかりです。
もの事には、バランスが大事です。
その点を、うまく立ち回ってバランスをとる。
それが我々行政書士の仕事だと思ってます!
それでは行政書士の本音は何か?
「登録はそんなに甘くない!報酬がもっと欲しい!」
です。
その所、良くご理解下さいね。(笑)
みんなのクレジットに業務停止処分
2017年3月、みんなのクレジットに「1ヶ月の業務停止命令」が下りました。
同社サイトの2017年3月30日の発表によると、
1)業務停止命令
期間は、3月30日~4月29日の1ヶ月間です。
2)業務改善命令
(ア)本件行政処分の「内容について顧客に対して速やかに適切な説明を行なうこと。
(イ)今般の法令違反及び投資家保護上問題のある業務運営について、発生原因を究明するとともに、直ちに是正すること。
(ウ)顧客が出資した財産の運用・管理状況を正確に把握し、顧客に対し、顧客が出資した財産の運用・管理の状況その他必要な事項の説明を速やかに行うこと。
(エ)顧客の意向確認を実施し、顧客の公平に配慮しつつ、意向に沿った対応を行うなど、投資家保護に万全の措置を速やかに講ずること。
(オ)責任の所在を明確化し、社内処分等を実施するとともに、金融商品取引業社として必要な内部管理体制を再構築すること。
(カ)みんなのクレジット、その親会社及びその関係会社の財務状況を正確に把握し、貴社における今後の資金繰り計画を策定すること。
この間、新たしいファンドの募集をはじめとする人気の事業を行なうことができなくなります。
この業務停止処分により、停止する業務は、
- 新規ローンファンドの募集
- 新規投資の申込み
- 新規口座開設
です。
引き続き行う業務は、「顧客取引の結了の為の処理」となっています。
- 顧客に対して速やかに適切な説明を行なうこと。
- 投資家への配当金や償還金の入金
- 投資家への預託金の払い戻し
- 投資家の会員情報の変更
- 投資家への情報発信
上記のような4つになります。
簡単にいえばファンドの募集と申込以外はこれまで通りの業務が可能です。
幸いにも、分配金や償還金は今までどおり貰えますので、個人的には非常に安心しました。
個人的な感想
みんなのクレジットに対する1ヶ月の業務停止命令というのは、あくまで是正のために営業を停止すべき最低必要な期間という意味あいが大きい。
期間が短ければ事象として軽いということを直接的に意味するわけではない。あくまでも今回だったように感じます。
そして軽かったということは、今回の問題は金融庁としてはそれほど大きな違反があったと認識していない、又はみんクレ側が金融庁の指導に対してしっかりと改善したということになると思います。
もし、大きな違反をしていて、運営に問題があったとすればさらに重い処分が下ったはずです。
そして、始めはみんなのクレジットが投資家を騙している前提で監査委員会の報告を読んでしまったので「これ自転車操業じゃん」と簡単にいってしまいましたが、一概にも今回の行政処分の内容を見るとそうではなかったような気もしてきました。
一時的にそういう状況に陥っていただけなのかもしれません。
もし、資金繰りが上手くいっておらず、今も酷い運営状況だったとしたら流石にこんな軽い処分では済まなかったはずです。
みんなのクレジットが公式で発表したように、現在は順調に運用されている可能性が高いように感じました。
とはいえ、監査委員会がセーフと判断する運営をしなければいけなかったのは間違いありませんから、やはりみんなのクレジットの管理で甘いところがあったというのは否めません。
まだまだゆだんはできないじょうきょうではありますが、とりあえず詐欺でないということ。
改善の方向に進んでいること。
注1:「株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について」
ソーシャルレンディング業界での行政処分
市場が立ち上がりつつあるソーシャルレンディング市場ですが、過去のソーシャルレンディング運営会社に対する行政処分を振り返ってみましょう。
たとえば、2015年7月に業界大手の日本クラウド証券(サービス名はクラウドバンク)が3カ月の業務停止命令および業務改善命令を受けています(注2)。
日本クラウド証券の場合は、顧客資産の管理がしっかり行えていないという点で業務停止および業務改善命令を受けましたが、その後に管理体制を整備するなどの対策を行い、現在もソーシャルレンディング大手の一角として活動を続けています。
注2:「日本クラウド証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」
証券取引等監視委員会に指摘されているポイント
みんなのクレジットに関して証券取引等監視委員会が問題視しているのは、貸付先が実際には分散されていない(親会社とグループ会社への貸付に集中)、組成したファンドの資金をファンドの償還資金や白石伸生代表個人の借入
金返済に充てているという点です。
投資家の出資金が毀損するかどうかが焦点
日本クラウド証券に対し行政処分が行われた際は、その後同社は社内体制の整備を行い、行政処分も解かれ、ソーシャルレンディング市場に復帰しています。また、ファンド出資者の資金が毀損することもなく、現在も業界の大手として活動を行っています。
では、みんなのクレジットの場合はどうでしょうか。
証券取引等管理委員会の資料によれば、みんなのクレジットの主な貸付先である親会社は、「貸借対照表(B/S)上では短期借入金が流動資産を大きく上回っている状態」と書かれています。
現状の流動資産のみでは短期借入金(=ソーシャルレンディングファンドからの借入金)の返済が滞る可能性が高く、証券取引等監視委員会も「ファンドからの甲グループ(=親会社)への貸付けは返済が滞る可能性が高い状況と認められる」と言及しています。
みんなのクレジットは「ファンドは正常に運営されている」と発表
証券取引等管理委員会の金融庁への勧告を受けて、みんなのクレジットは「証券取引等管理委員会の勧告について」という文書を発表しています(注3)。
その中で現在運用中のローンファンドは予定通り正常に運営されていること、および親会社の財務状況については、2017年3月時点においての不動産事業の売上げは順調のため、ファンドの返済は直近の不動産の販売推移から十分可能と判断しているとしています。
同社の説明が正しいなら、投資家のファンド出資金は予定通り返済され、投資家の資金は毀損しないことになります。よって投資家のファンド出資金が毀損するか否かは、今後の事態の推移を見守る必要があります。
注3:「証券取引等管理委員会の勧告について」
まとめ
2016年に立ち上がりを見せたソーシャルレンディング市場は、これまで年利で5~10%といった好パフォーマンスを投資家に提供するケースが多く、一部では「ソーシャルレンディングは魅力的な投資先」という、声も聞かれるようになっていました。
リスクのない投資は存在しません。しかし、みんなのクレジットの一件では、投資対象に関する通常リスク(例:融資先からの資金回収率が想定を下回る等の通常のリスク)に加えて、事業者の資産管理に関するリスクが顕在化したものであり、投資家を悩ませるものです。
顧客資産の管理に真剣に取り組んだうえで、高い利回りを提供してきた事業者もある中で、この一件がソーシャルレンディング全体にネガティブなイメージをもたらすのは残念なことです。
個人投資家は見た目の利回りの高さだけではなく、慎重に事業者を選び、ソーシャルレンディング投資を行う必要があると言えるでしょう。
超低金利下、年率2ケタで回る濡れ手で粟の投資などそうあるはずもない。だが、うまい話は浮かんでは消え、憂き目を見る者が後を絶たない。
3月24日、証券取引等監視委員会はみんなのクレジット(以下「みんクレ」)に行政処分を行うよう、金融庁に勧告した。
これを受け、関東財務局は3月30日、4月29日までの1カ月のすべての業務停止命令を発表した(解約のための処理業務を除く)。顧客に対して速やかに適切な説明を行うことや、業務運営を直ちに是正すること、今後の資金繰り計画の策定などの業務改善命令も出した。みんクレはホームページ上で「真摯に受け止め、早急な改善に努めて参ります」などと謝罪文を掲載している。
フィンテックブームに乗る
みんクレはウェブサイトを通じて出資を募り、不動産ローンや中小企業ローンに資金を貸し出す、いわゆるソーシャルレンディング(ネットで貸し手と借り手を繋ぐ融資仲介サービス)の一種として2016年4月に投資勧誘を始めた。代表者はかつてスピード・パートナーズ社の社長を務めた白石伸生氏だ。
フィンテックブームに乗り、昨年11月末には17.6億円もの資金が集まっていた。出資者は全国で延べ約2000人だという(昨年11月末時点)。
「行政処分勧告をした3月24日には44億円を超えていた」(監視委員会)というから、凄まじいほどの資金の集まりようだ。みんクレのサイトには3月30日現在、「成立ローン総額45億1081万円」とあったが、翌31日には掲載をとりやめている。
銀行の預金金利が定期でも年0.03%前後という超低金利時代にあって、みんクレは年利14.5%といった高利回りをうたい文句に資金を集めていた。手掛けたファンドは56本(昨年11月末)。このうち年率換算で15%台の配当をしたファンドもあったが、それはごく少額のファンドだったという。ファンドの多くは未償還のまま。今後、高利回りが期待薄であるどころか、元本が返ってくるのかも定かではない。